幽霊姫は止まれない!
「それだけメリットいっぱいですから、私もやっぱり幽霊の自分を選んじゃうかもしれません」
「そっか」

 それ以上深く聞かれずホッとする。
 きっと、あえて答えを避けたことに気付いたのだろう。

「でもどうせ幽霊やるんだったら、空とかも飛べたらいいのにな」
「空は……」
 ソードマスターなら、飛べる。飛ぶというには落下という感じだったが、それでもオスキャルと一緒に空を飛んだのは私の思い出だ。

(でも、これを伝える必要はないわね)

「飛べなくても、便利なことは他にたくさんありますから」
「それはそうだ」
 そう断言すると、軽く頷いたサイラスが私の頭をぽん、と撫でる。兄がするような、甘やかすその行為。だが、兄ともオスキャルとも違う細く長い指だった。

「それでも。もし疲れたらいつでも〝幽霊〟をやめればいいからな」
「幽霊をやめる、ですか?」
「あぁ。幽霊姫って名前は、この国でしか流れてないからね。やめる方法なら沢山あるよ」
「この国でしか……」

 確かにそうだった。
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