幽霊姫は止まれない!
少し申し訳なさそうにそう聞かれ、考える。
名誉不名誉の話ならば当然不名誉なこのあだ名だが、訂正せずそのまま流したのは他でもない私自身だ。
確かに心無い言葉を投げかけられるという点では決して好ましいわけではないが、むしろこのあだ名で得することも多かった。
(誰も活発に動き回る私を、引きこもりの幽霊姫とは思わないから潜入もし放題だし)
だから。
「私はこれくらい平気でしたよ。だって私は、幽霊ですから」
「でも幽霊にも心はあるだろう?」
「心は」
ある。でも。
「メリットとデメリットを考えてってのはなしね。俺も幽霊のメリットを考えたら幽霊でいることを選ぶ自信あるし」
うんうん、と納得顔で頷く月夜に照らされたサイラスの横顔がなんだか幻想的で目が奪われる。
(私の考えと同じだから?)
胸の高鳴りとは正反対な、不思議な感覚。凪いでいくようなこの穏やかさは、彼の考えに共鳴しているようだった。
──この人なら、わかってくれるかもしれない。
確信に似た予測が私の中にふっと芽生え、そして結局口にするのをやめた。
名誉不名誉の話ならば当然不名誉なこのあだ名だが、訂正せずそのまま流したのは他でもない私自身だ。
確かに心無い言葉を投げかけられるという点では決して好ましいわけではないが、むしろこのあだ名で得することも多かった。
(誰も活発に動き回る私を、引きこもりの幽霊姫とは思わないから潜入もし放題だし)
だから。
「私はこれくらい平気でしたよ。だって私は、幽霊ですから」
「でも幽霊にも心はあるだろう?」
「心は」
ある。でも。
「メリットとデメリットを考えてってのはなしね。俺も幽霊のメリットを考えたら幽霊でいることを選ぶ自信あるし」
うんうん、と納得顔で頷く月夜に照らされたサイラスの横顔がなんだか幻想的で目が奪われる。
(私の考えと同じだから?)
胸の高鳴りとは正反対な、不思議な感覚。凪いでいくようなこの穏やかさは、彼の考えに共鳴しているようだった。
──この人なら、わかってくれるかもしれない。
確信に似た予測が私の中にふっと芽生え、そして結局口にするのをやめた。