幽霊姫は止まれない!
「まぁ、もし俺が親善目的で来た国で万が一行方不明にでもなったら、国同士の問題になっちゃうからなぁ」
 明るく笑い飛ばされ、私も苦笑する。

 彼の言い分はもっともで、王族としては当たり前の考えだ。

「じゃあ、どこをまず案内してくれる?」
「うーん……」
 
 どこを、と言われてもつい迷ってしまう。最近入り浸っていたのは娼館だが、流石にそこはないな、と外した私は首を傾げた。

(いいところはいっぱいあるけど)

 サイラスはこの国のどんなところを見たいのだろうか。彼の真意によって案内する場所は変わってくる。

 何を求められているのかを掴み損ねたまま頭を捻るが、どうせこのまま考えても答えはでないだろう。
 何故なら私たちは、まだお互いのことを何も知らないのだから。

(だったら、知ってもらうところから、ね!)

 ある種、一種の開き直りのような結論に辿り着いた私は、口角を上げて前を指差した。

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