幽霊姫は止まれない!

第九十八話 新しい感情で物事を

(それでも、いいの?)

 好きな人を、好きなままでいい。
 それは私にとっては願ってもない言葉。

(政略結婚の相手として、彼以上の人っているのかしら)

 国交の点を見ても、人格を見ても、何も悪いところはない。身分だってこれ以上ないどころか、今日一緒に過ごして彼のいいところを知った。素敵だと思った。
 たった半日でこれだけ知ったのだ、きっと一緒にいればどんどん彼の人柄に惹かれるだろう。

 それこそ、オスキャルより好きになるかもしれない。
 しかも、無理して忘れる必要すらないと彼は言ってくれるのだ。

 絶対今、ここで頷くべき。
 そうわかっているのに、体が固まり動けない。

「俺を選ぶなら、全部受け止めてあげるよ」
 
 それは、私の初恋を含めての言葉。
 彼以上の結婚相手はいないかもしれない。けれど即答できないのは、自分の中でオスキャルが大きく育ちすぎていたからだった。
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