幽霊姫は止まれない!
 オスキャルを護衛騎士に任命したのも、ずっと側にいたのも、どこでも自分が安心して無茶苦茶に振る舞えていたのも全てオスキャルがいてくれたからだ。オスキャルを信頼していたからだ。彼を好きだったから、何をしても楽しかったのだ。

 けれど、そんな彼を手放したのも私自身の決断。
 自分勝手な理由で突き放し、傷つけたのも全て私だ。

(それなのに、ここでも迷うなんて最低だわ)

 早く返事をしなくては、頷くだけでいいのに、と色んな考えが浮かんでは実行に移せずただただ消える。

「えっと……」

 好き同士じゃなくても政略結婚は成立する。そんなことわかっている。
 それに好意なら、ある。それが恋愛的な意味ではないだけで。そしてそれはまさにお互い様というやつで、変に気を遣わなくてもいいならこれ以上好都合な相手だっていないのに、すぐに頷けない私の頭を、サイラスがぐしゃぐしゃと乱雑に撫でた。

「返事はすぐじゃなくていいよ。実はいくつかパーティーの招待状が届いててさ。エヴァ、俺のパートナーとして出てくれたら嬉しいんだけど、どうかな?」
「エスコートしてくださるんですか?」
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