幽霊姫は止まれない!
 まさか体が強張って返事ができないとは想像もしなかったのだ。
 むしろ断られることだって十分あり得たのに、私の方が保留にしてしまうなんて想像もしなかった。

 うーん、と悩みながらごろりと体勢を変える。
 その瞬間、ドンドンと乱暴に部屋の扉が叩かれてギョッとした。

「エヴァ! お兄ちゃんだ! エヴァ!」
「お、お兄様?」
 ただ事ではない声色に目を白黒させながら慌ててベッドから起き上がる。

(まさか本人が来るなんて)

 普通ならば、伝令に呼びに来させる。それを王太子である本人が直接部屋まで来たことに戸惑いつつ扉を開けると、半泣きの兄と目が合った。

「ど、どうされました?」
「け、結婚、プロッ、プロポーズされたって……」
「え? あ、あー」
(サイラス様、どんな言い方をしたのよ)

 兄とサイラスは友人同士。
 きっと何気なく、そして悪気なく今日のことを言ったのだろう。

「じ、事実なのかっ!?」
「えーっと、お兄様がどう聞かれたのかはわかりませんが、政略結婚の相手に俺はどうかと言われたのは事実ですね」
「な、なんだとッ!」
「お、お兄様っ!?」
< 552 / 574 >

この作品をシェア

pagetop