幽霊姫は止まれない!
 今まで表に出なかったせいで、私が家族から蔑ろにされているのだと思っていたのだろう。だが、実際はそうでないと気付いた貴族たちの、いわば手のひら返しというやつだ。

(サイラス様へも送っていて、それでいて私を取り込んでもあまり影響がない相手がいいわね)

 今までのことを忘れてすり寄ってくるのは構わない。そもそも私自身が蔑まれることを許容してきたのだ。
 ある程度の利用も仕方ないが、万が一にでも過激な手段にでも出られたら困る。

 その条件を考えると、ある程度既に力のある貴族で、わざわざ末の姫を取り込まなくてもいい家。
 そして隣国の王子を正当にもてなせる家となると、かなり絞られる。

 だが、家が強くなれば強くなるほど、今まで表舞台を避けていた私には辛い場所になるだろう。

「……この招待を、受けようと思っています」
 そう言って手にしたのは、四隅の金飾りのある白い封筒。その封筒には特徴的な鷲の印章が押された豪華なものだ。

「その招待状は」
「ファッシュ公爵家から送られてきたものです」
 ノルベルト・ファッシュ公爵。
 宰相も担う公爵家の家で──母の、実の弟でもあった。
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