幽霊姫は止まれない!
 触れた手にはドキドキしない。

(当たり前よ、お兄様だもの)

 そしてそれは、サイラスにも言えることだった。

(でも、ドキドキしなきゃ結婚できないわけじゃないもの)

 選ぶべきものと、選ぶもの。
 それから、『選べない』ものがこの世にはあるから。

「……パーティーなら、許そう」
「ありがとうございます」
 過保護な兄のセリフに思わず苦笑する。

(サイラス様に誘われたこと、知ってるのね)

「まぁアイツのことだから、距離感は守ってくると思うが」
 はぁ、とため息交じりにそんなことを呟いた兄は、私をまじまじと眺めた。

「ドレスは俺が用意する。いいな?」
「わかりました。お兄様からのドレス、楽しみにしていますね」
「あとパーティーは、ちゃんと選ぶように。その辺の情勢はサイラスにはわからないからな」
「はい。実は私へも届いてる招待状の中から選ぼうと思っていまして」

 先日の私の登場を見て、今まで幽霊姫と蔑んでいた貴族たちから、次々と招待状が届いていた。
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