幽霊姫は止まれない!

第百十話 どこでだって、どんな業だって、君となら

 私の言葉を聞いたオスキャルの瞳が一瞬で緩む。彼の瞳からハラリと零れる涙が、どうしてだか私も滲んでよく見えなかった。

(ふたりとも泣いてしまうなんて情けないわね)

 内心毒づいてみるが、棘のない毒に涙を止める効果はなく、私を抱きあげているオスキャルの首に自らの腕を回す。
 彼の肩口に顔を埋めると、今まで何度も感じた彼の温もりに、心の奥がきゅんとした。

「苦労させますが」
「苦労をかけてたのは私の方でしょ」
「王族、いや、貴族のような暮らしも、もうなくなってしまいますけど」
「私の本当の姿を見て、高貴な血筋だと思う人なんて元々いないんじゃない?」
「平民どころか、その日暮らしの旅人かも」
「世界が見て回れるなんて素敵じゃない」

 追手がかかるかも。そうなれば結局オスキャル頼みの逃亡劇になる。
 でも、ふたりじゃないと意味がないともう痛いくらい実感してしまった。

「身体的な能力面ではどうしようもないから、料理とか覚えるわ。私にできることを探すから、一緒にいて、オスキャル」
「そんなこと、頼まれなくたって……ッ」
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