幽霊姫は止まれない!
 オスキャルに抱き着いている腕の力を強めると、オスキャルが私の首筋に頭をすり寄せるように近づける。
 そのままグリグリと肩に額を押し付けられて、本当にどこまでも犬みたいだ。

 ――あぁ、なんてかわいいのだろう。

(私だけの、宝物)

「あー。盛り上がってるとこ悪いんだけど、駆け落ちはもう遅いんじゃない?」
「「うわぁ!?」」
 完全にふたりの世界に入り込んでいた私たちに申し訳なさそうにしながら、サイラスが片手をひらひらと動かす。

 見られていたことを思い出して羞恥心に死にそうになりながら、彼の手の動きに首を傾げた私は、その先にいた人物に愕然とした。

「お、お兄様っ!?」
 絶対零度。その場の空気を凍らせながらテラスのガラス扉のところに仁王立ちしている兄に体が縮み上がってしまう。

(い、いや、でも駆け落ちするならなんとかお兄様から逃げないと)
 だが兄は騎士団団長であり王太子。ソードマスターほどではないがその力に近い能力を持っているのだ。

 対してオスキャルは、私というお荷物を抱えている。
 形勢、圧倒的に、不利。

 緊張からじわりと額に汗が滲む。
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