幽霊姫は止まれない!
 だが、もちろんこんなことで諦める私ではない。相手の近くに潜入できないのであれば、相手を呼び寄せればいい。幸いにも私の護衛騎士であるオスキャルは今回の隣国へも当然付いてきてくれることになっていた。どうせふたりとも一緒に行くのだ、〝私の目的で隣国へ行く〟のではなく〝オスキャルの目的で隣国へ行く〟のに変えても大差ない。
隣国へ行きたい私に彼が付きそうのではなく、隣国へ行きたいオスキャルに私が付きそう。幽霊姫である私の顔は知られていないのだ、護衛騎士に王女が引っ付いていても気付かれることはないだろう。そのための平民設定、そして恋人設定である。

(恋人という建前でもなくちゃ、国を跨いでまで付いて行かないもの)
「完璧だわ」
「いや、最悪ですって」
 この完璧な計画、完璧な理由に絶対の自信を持っている私に対し、どこか辟易とした表情になりながらオスキャルがそんな返事をする。その彼の言葉に思わずムッとした。

「どこが最悪なのよ」
「全てですよ、全て! エヴァ様の言い分はわかりますよ、確かにこの作戦とこの設定なら、貴女は身分を隠し潜入できますもんね」
「でしょう? 言ったじゃない、完璧なの」
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