わけありくんを護ります
渋々了承すると、急に比江島くんが包帯を巻いた私の手をそっと撫でた。
「……本当、凛さんは強いんですね。可愛いのに」
「可愛いは余計」
「余計なわけないでしょ。本心です。……護ってくれて、ありがとうございます」
「ボディーガードだからね」
「はい……で、でも傷が残ったらどうしましょう!?女の子の手に傷なんてっ」
はぁ、ほんと喜怒哀楽がはげしいなもう……"怒"はないけど。
「それはそれ。気にしないで。意外と治るもんだし」
「でもぉ……」
「なるべく残らないように薬買うから。後、ほらこれ、乙女子さんにお釣りと渡してきて」
「あ、そうでした。ちょっと行ってきますね!凛さん動いちゃだめですよ!」
バタバタと走りながら比江島くんは出ていった。
「動いちゃだめって……手くらいでそんな」
1人苦笑いするけど、すぐに先ほどの男の子を思い出され、私の顔は険しいものになった。
「……あの子が着てた服」
漆黒と紺をまだらに混ぜ合わせた服の柄。
フードに縫われた月の刺繍──
強瀾やかまいたちと同等だと、名が上がっていた組織。
そして、比江島くんを探し回っている、
──【ヨイヤミ】だった。
安全ノートの情報通り。
「……かまいたちの時みたいに簡単にはいかなそうね──」