わけありくんを護ります

「……別に、平気」


布団に顔をうずめたまま、返事をした私の耳に、お金の聞こえてきた。
音が近かったから、私の机に置かれたと思われるけど。

比江島くんが、空間を区切る線をこえるために支払ったということで……

なに用か目まで布団をさげると、すでに私の目の前に影ができ、額に置かれた手。


「なに急に」

「俺より先に起きないから、なんか変だなって思ったら……」
「いいでしょ。たまには。まだ寝てたいの」
「違います。ちゃんと原因がありました」

珍しく真面目な顔をするから、その原因とやらを聞こうとあえて口をとじておく。

「熱、ありますよ。凛さん。……平熱が高めの俺のおでこより、熱いですから。間違いでも勘違いでもないですね」

と、比江島くんは私の額と自分の額に手を当てて何度も頷いた。

すぐに、救急箱から体温計を出され、上体を起こしてはかれば──


「……ほら、言ったでしょ?」

微熱、だけど数字を見て自覚すると、どっと体が重く感じた。
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