わけありくんを護ります
「こんなのどうってことない。なるべく話さずマスクして過ごすから」
電源をオフにして、比江島くんに体温計を返す。
「だめです。この前、手のひらを怪我した時も似たようなこと言ってましたけど」
「似たようなこと……?」
『こんなん怪我のうちに入らないでしょ。大怪我じゃないんだし』
ああ……覚えがありすぎて、比江島くん相手に返す言葉につまる。
「あの時も今も、れっきとした怪我だし、風邪です。ちゃんと治すためのことをするものなんです」
うっ……正論すぎてまたも言い返せない。
「それに、凛さんが俺にツンツン言ってこないのも、熱のせいじゃないですか」
「ツンツンってなに……」
「全然ハキがありませんし怖くない」
うるさいな。
「ってことで、治るまで俺が凛さんの看病します。あと、文句は受け付けませんので。とりあえず、俺の救急箱から色々準備して……あ、水枕!」
比江島くんは、私を寝かせ布団をかけると、せわしなく動き始めた。
──そんなに焦らなくてもいいのに。