わけありくんを護ります






熱が下がってから数日経ったのに、なんか体が重い感じがする。
なまってるっていうのもあるけど。

女子トイレを出て廊下を歩きながら肩を回せば、関節が鳴った。

……これは、少し部屋でトレーニングでも
──と思ったところで足を止める。
角から走ってくる足音がしたから。


「……っと!?ごめ……あ、凛ちゃん」

「竹森くん。今登校?」

今、2時間目の休み時間だけど。

「まぁ……実はこれをね」

「あぁ……」

竹森くんが鞄から見せてきたのは、処方された『胃薬』だった。
なんで?とか聞かなくても分かる。

また梅木くんのお重に胃がやられたんだ……

「先生から食べ過ぎとか言われてさ……ちょっと笑われたから恥ずかしかったし」

「そうだったんだね……」

「俺たちが凛ちゃんを真似て、ブンに持ち帰りの話したんだけど……"男の子でしょ!"って言われてだめだった」

いつもよりしおしおしている竹森くんの肩を叩く。

「お疲れ……そろそろチャイム鳴るから、またね」

「うん、また。ありがとう」

──竹森くんはああだけど、松野くんの胃はなかなか強いのかな。
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