無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
男性は木島の背中を押し、駅に向かって歩き出した。

「おい、取材も終わったから急いで会社に戻るぞ」

木島は男性にせき立てられながら振り返ると、悔しげな視線を向けて立ち去った。

乱暴な足取りで駅に向かう彼女の背中が人混みに消えてすぐ、美月は詰めていた息を吐き出した。

突然のことに心臓が落ち着かず、トクトク音を立てている。

〝この先木島さんとかかわる機会があっても意識しないでいいし、無理につきあう必要もない〟 

ふと碧人に言われた言葉を思い出した。

木島に圧倒された美月を落ち着けるための言葉だと思っていたが、別の意味もあったようだ。

木島を意識せず、つきあう必要もない。

木島の性格や自分への気持ちに気づいていて、それでも美月が必要以上に気にしないよう遠回しに注意してくれたのだ。

「はあ……」

もう一度、美月は気持ちを整えるように深く息を吐き出した。

木島に感情的に責められたことにはもちろん納得できないが、碧人の仕事に限って言えば彼女の方が自分よりも理解しているのはたしかだ。

つきあいの長さを考えれば当然だとしても、やはり自分との差に落ち込んでしまう。

「アグレスって、なに?」

彼女が口にしていた言葉だ。碧人に関係する言葉のはずだが、意味がわからない。

それ以外にもうひとつ。

美月は木島たちが出てきた店を見上げ、見覚えのあるロゴに目を凝らした。

それは碧人がお気に入りだといってプライベートで身に着けている腕時計のブランドロゴで、昔海外の空軍が採用したことがあるという腕時計が有名らしい。

碧人も以前から憧れていたと言っていた。

木島たちはブランドの歴史的背景を意識して、この店を取材していたのだろう。

なにからなにまで碧人につながる木島の仕事ぶりを目の当たりにして、気が滅入る。

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