無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
今日一緒に映画を観に行って、すっかり打ち解けたようだ。サックママ、サックパパと呼んで懐いている。

「碧人さんも、食べますか?」

美月は手の甲で頰の涙を拭い、目の前に置かれたケーキを手元に寄せた。

それは店の看板商品、人気のシフォンケーキだ。

『結婚おめでとう』の文字と、もちろん描かれているのはイーグルだ。

お客様に提供しているよりもかなり大きなプレートには、二機のイーグルが並んでいる。

そして二機が向かっている先には、ハートを貫く矢。

それはブルーインパルスの人気の課目、キューピットに違いない。

この春まで碧人が描いていた思い出の矢が、まっすぐハートに伸びている。

「なんだよ、ここにも俺を喜ばせるのがうまい人がいたってことか?」
 
碧人は丁寧に描かれたイーグルとハートを食い入るように眺め、かみしめるようにつぶやいた。

その目は潤み、口もとは微かに震えている。

「食べるのがなんだかもったいないですね」

美月は碧人の目に浮かぶ涙に気づかない振りで笑いかけた。

いつの間にか涙は止まっていて、ようやく驚きに変わって喜びを実感できるようになってきた。

「でも、お腹もすいたし、食べますか?」

フォークを手に問いかける美月に、碧人は指先で目尻を拭いニヤリと笑った。

「食べさせて」

碧人はそう言って、椅子ごと美月に身体を寄せた。

「え?」

聞き間違いだろうかと、美月は目を瞬かせた。

「ん?」

碧人は楽しげに笑い、美月に顔を近づける。

本気でケーキを待っているようだ。

「えっと……じゃあ、ひと口だけ」

美月はイーグルやハートのイラストが崩れないよう気をつけながら、シフォンケーキにフォークを差し入れた。

そのまま慎重にケーキの欠片をすくい上げて、蓮人の口もとに近づけた、その時。

「ママー、蓮人が食べるー」

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