無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
店長の岡崎が日葉里に声をかけ、アイスコーヒーをテーブルに置いた。

先月三十七歳になった岡崎は、美月が在籍していたヨーロッパ事業部からカフェ事業部に一年前に異動しこのカフェに赴任した。

ほかにもいくつかのカフェの運営管理を任されていてかなり忙しい。

彼は美月の新入社員の時の教育担当で、面倒見がよく仕事ができると評判の優しい先輩だ。

幼少期から海外生活が長く英語が堪能な岡崎は、美月の入社以前にアメリカとイギリスに赴任した経験があった。

美月がイギリス赴任を希望していると知れば自身の経験を交えながら希望が通るためのアドバイスをくれたり、念願叶ってイギリス赴任の内示が出た時には英会
話のレッスンをしてくれたりとかなり世話になった。

けれど赴任の一カ月前に美月の妊娠がわかり、結局赴任を辞退した。

その結果、急遽別の社員の赴任が決まり事業部内に小さくない混乱が生じた。

おまけに美月のために上司に推薦文まで書いてくれた、岡崎の顔を潰してしまった。

当時を思い出すと、今も岡崎をはじめとする多くの人に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

偶然にも再び岡崎の下で働くと決まった時、迷惑をかけた岡崎のために力を尽くそうと決めた。

「さっき航空祭っておっしゃってましたけど、この時期旅館は予約でいっぱいなんじゃないですか?」

岡崎の問いに、日葉里は「そうなんですよ」と答え、コーヒーを口に運ぶ。

「前泊するファンが多いからうちは商売繁盛でありがたいんですよね。ここも去年はかなり忙しかったでしょ?」

「たしかに。SNSの力を実感しましたね」

岡崎はクスリと笑い、長身の身体を小さく揺らした。
一重まぶたの大きな目が優しく光る。

「うちはおいしいモーニングが売りなんですけど、ここ一年は例のシフォンケーキがSNSで広まったおかげで航空自衛隊ファンの方が大勢来てくれるようにな
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