無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
りました。おかげでこちらも商売繁盛です」

岡崎は冗談めかして言っているが、それは決して大袈裟な話ではない。

SNSで情報が拡散された結果、小松基地に配置されている戦闘機、通称イーグルの絵をチョコペンでプレートにデコレートしたシフォンケーキが人気を呼び売
れに売れたのだ。

その結果、今ではそれまで一番人気だった玉子サンドに代わる店の看板に成長した。

「あ、すみません、今から配達なんです。ごゆっくり」

岡崎は思い出したようにそう言って軽く頭を下げると、美月に「『憩い園』にプリンを届けてくるから、店をよろしく」と言い残し厨房の奥へと駆け込んだ。

憩い園は車で十分ほどの場所にある老人介護施設で、注文を受け週に三日おやつにプリンやシュークリームを作って届けている。

「岡崎さん、いつも忙しそうね」

日葉里は感心し、コーヒーを飲み干した。

「今日はバイトさんが少ないから余計にね。私もリモートだけど今から工務店さんと打ち合わせなの」

「工務店? なになに、改装でもするの?」

「そんなおおげさなものじゃないけど、ベビーカーとか車椅子がスムーズに出入りできるように裏口にスロープを付けて間口を広げることにしたの」

休日には親子連れの客が多く、ベビーカーの持ち込みも少なくない。

週に一度実施している子ども食堂にベビーカーに乳幼児を寝かせて参加する親子はさらに多く、以前から考えていたのだ。 

「本社で決裁がおりたから、具体的に動き出して忙しくて」

カフェにはもうひとり社員が本社から来ているが、それでも人手が足りず忙しい。

総勢十人のバイトの力を借りながらの日々だ。

おかげで本来はバックヤードの仕事に専念するはずの美月も、フロア業務で一日が終わることも多い。

「ふうん。でも楽しそうよ。こっちに来た時は顔色もよくないしギリギリって感じだったけど、今は生き生きしてる」
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