無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
整わない呼吸の合間、続けて名前を口にすると碧人の目がすっと細くなり身体はいっそう熱を帯び始める。

「美月。好きだよ」

微かに震える声とともに降りてきた唇はひどく熱くて、ここに碧人がいると実感する。

高級ホテルのベッドの中、身を沈ませながら受け止めた碧人の唇は柔らかくて懐かしい。

唯一美月が知っている自分以外の唇。

高校生のほんのわずかな間隣にいた時に触れた唇。

記憶の中にあるよりも力強く感じるのは気のせいだろうか。

「ふ……んっ」

呼吸の合間、唇が開いたタイミングで入り込んできた碧人の舌が、探るように美月の口内を動き回る。

高校生の時にはなかった積極的な動きが美月の全身に更なる刺激を送り込む。

「……美月」

熱い吐息と甘い声。

色気を増した表情で美月を見つめる瞳。

これは夢じゃない。

幸せすぎて泣きそうになる。

「碧人先輩……」

会えなくなってから八年、何度も碧人が夢に出てきた。

夢の中の碧人は高校の時と同じ爽やかで優しい笑みを浮かべていて、美月は絶えず胸をときめかせ、傍らに寄り添っている。

幸せで満ち足りた空気に包まれて、心配も不安もない、ただ互いの存在だけがあるという、そんな愛おしい時間。

ずっと続けばいいと願いながらもやがて目が醒めて、現実を思い出す。

もう碧人の声を聞くことも笑い合うことも、ないと思っていた。

なのに今、こうして互いの体温を合わせ貪るようにキスを交わし見つめ合っている。

「夢じゃない……」

美月はこのまま時が止まればいいと願いながら、碧人にしがみついた。

もしも夢だとしたら、二度と醒めないでほしい。

「好きだ。今もずっと」

突然美月にしがみつかれて、碧人は絞り出すような声で答えた。

「今日、美月を見つけた時、息が止まるかと思った」

「んっ」

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