無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
今まで映像や写真で何度も見てきたが、実際に目にするのは今日が初めて。

ブルーインパルスの機敏な動き、そして飛行スピードの速さにはもちろん驚いたが、次々と繰り出される飛行技術にも圧倒されっぱなしだ。

生まれてすぐの頃からブルーインパルスの映像や写真を美月から頻繁に見せられている蓮人も、いざ本物を目にして興奮しているようだ。

顔を真っ赤にし、キョロキョロと機体が現われるのを待っている。

きっと自分も同じ。興奮で頰は赤みを帯びていて、こぼれ落ちそうだとよく言われる大きな目はさらに大きく見開かれているはず。

心地よい風に揺れる髪も、四方八方に毛先を伸ばしてかたのあたりで揺れている。

「あ、来たよ!」

美月は編隊を組んで再びこちらに向かって飛んできた機体に向かって手を振った。 

「わーっ」

美月に負けないとばかりに蓮人も背を伸ばし手を振る。

「サック、がんばってるね。次はなんだろうね」

六機の機体が順に描くモチーフに歓声があがり、それにつられて蓮人のテンションも高まっていく。

「さっくー」

蓮人は顔を空に向けたまま四番機を操縦している〝サック〟を捜している。

頭が痛くないのかと心配になるが、それは美月も同じ。

飛行が始まってからというもの絶えず空を見上げていて、気づけばあまりの迫力に口もぽかんと開いている。

予想していた以上の迫力とプログラムされたような一糸乱れぬ動きから目が離せない。

これほど感動するのなら、頻繁に見に来ていればよかったと後悔するほどだ。

とはいえ手がかかる二歳の息子とふたりでここに来るには覚悟が必要で、今回もぎりぎりまで迷っていた。

それでも思い切って来たのは、ブルーインパルスのパイロット、いわゆるドルフィンライダーとして三年間の任期を終える〝サック〟こと桜井碧人のラストフ
ライトだからだ。

「サック……碧人先輩」

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