無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
碧人の命の行方は、自分にはどうすることもできない。

ただ無事を祈るだけ。

その時の感情を思い出すだけで、今も手が震えている。

「……私」

なにを言おうとしているのか自分でもわからない。

それでも今目の前に碧人がいる現実を確認したい。

美月は自分からにじり寄り、碧人の顔を見つめた。

「美月」

碧人はふっと表情を緩め、美月の頰を両手で包み込んだ。

「美月が安心できるように、それに三人で幸せになれるように今まで以上に確実に、それに慎重に仕事に向き合う。だから、俺を信じて一緒に暮らしてほしい」

「碧人先輩……」 

蓮人への父親としての愛情と美月への責任感。その真摯な想いが胸に響く。

美月は自分の気持ちを確認するように、目を閉じ息を吐き出した。

まっ先に頭に浮かんだのは、やはり昨日感じた恐怖だ。 

この先碧人を失うかもしれないという、その恐怖を跳ね返す自信はない。

けれど一度その恐怖を知った今、たとえ碧人との縁を再び切って会わずにいてもそれが消えないこともわかっている。

むしろ離れれば離れるほど心配は募り不安も大きくなるはずだ。

スクランブル発進だけじゃない、訓練や自然災害への対応の時にも事故は起こりうる。

そんななにもかもが気になって、恐怖を抱えたまま日々を過ごすはず。

それならいっそ、碧人の傍らですべての不安や恐怖に立ち向かう方がいい。

離れていても一緒にいても心配なら、側で碧人の無事を祈りたい。

だったら答えはひとつしかない。

美月はゆっくりと目を開き、頰を包む碧人の手に自分の手を重ねた。

「蓮人とふたり、碧人先輩と一緒にいさせてください。よろしくお願いします」

迷いのない声が部屋に響き、碧人の表情がほころんだ。

ありがとう。必ずふたりを幸せにする」
 
気づけば美月の唇は、碧人のそれに塞がれていた。

 

十二月一日。

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