無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「これからは蓮人の成長を側で見ていたい。なによりこれ以上美月ひとりに苦労をさせたくないし、一緒に蓮人の成長を見守って喜び合いたいんだ」

「苦労なんて、全然。蓮人と一緒にいられるだけで私は幸せで。お腹にいる間も会えるのが待ち遠しくてたまらなかったんです。だって……」

お腹にいるのは碧人の子。

美月の人生で唯一愛した人の子どもだ、会える日が楽しみで仕方がなかった。

未婚のシングルマザーになる不安が霞んでしまうほど、待ち遠しかったのだ。

「美月?」

不意に黙り込んだ美月の顔を、碧人が不安げに覗き込む。

「なんでもないんです」

美月は言いかけた言葉を胸に納めた。

ずっと好きだったと言って、碧人にこれ以上の責任を感じさせたくない。
 
「苦労をしたなんて本当に思ってません。だから碧人先輩が気に病む必要はないんです。むしろ蓮人と一緒にいられる幸せの方が大きくて、後悔もない――」

「だったら俺にもその幸せを分けてほしい。父親として蓮人と生きる幸せをくれないか?」

「あ、あの」

熱がこもった声に、美月はたじろいだ。

碧人がこれほど蓮人を望んでいるとは思わなかったのだ。

自分の考えの甘さを思い知らされたようで情けなくなる。

「あと、仕事が仕事だから勤務は不規則で不安にさせることも多いが」

「はい」

美月は昨日のスクランブル発進のことを思い出して表情を強張らせた。

碧人が言う〝不安〟は、きっとそういうことだ。

正確には不安どころじゃなかった。恐怖だ。

碧人の任務についてなにも知らないばかりか命がかかっていることも頭でしかわかっていなかった。

いざスクランブル発進という言葉が碧人に繋がるのだと認識した途端全身が震え、あっという間に広がった恐怖を、どうすることもできなかった。
 
そう、どうすることもできないのだ。

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