無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「あ、あい……私のこと、ですか?」

美月は思いもよらない言葉に掠れた声をあげた。

動揺で心臓が激しく鳴っている。

「美月以外、他に誰がいる?」

心外だとばかりに碧人はため息を吐き、肩を落とした。

「俺は美月以外の誰とも結婚するつもりはないし、幸せになれるとも思わない」

まるで子どもに言い聞かせるように、碧人は一語一語ゆっくり話す。

それだけで碧人が冗談を言っているわけではないとわかる。

「だったら……」

視界の片隅に映るドライフラワー。

親しげな笑顔で碧人に花束を贈った女性の姿が、頭に浮かんで素直に喜べない。

「美月?」

これ以上胸に納めておくことはできそうにない。

美月は碧人の向こう側に見えるドライフラワーを見つめながら、口を開く。

「だったら、あの女性のことはどうするんですか?」

ガラスケースの中で大切に守られているドライフラワー。まるであの女性の代わりにそこにあるような気がして切なくなる。

「は? あの女性って、なんの話だ?」

間の抜けた顔で、碧人は首をかしげる。

「それは……あ、あの花を碧人さんに渡していた……」

碧人の意外な反応を不思議に思いつつ、美月はおずおずとドライフラワーを指差した。

ガラスケースが室内の明かりに照らされてキラキラしている。

「花? ああ、あの乾燥させた花? あれが気に入ったのか?」

「そういうわけじゃ……たしかにきれいですけど」

あっけらかんと答える碧人の声に、さらにしっくりこないものを感じる。

「乾燥させる前は原色の塊。どう見ても俺のイメージじゃないし同僚たちにも笑われたんだよな。最後くらい嫌がらせはやめてほしかった」

「嫌がらせ?」

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