無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
碧人は信じられないとばかりに何度も首を横に振り、大きく息を吐き出した。

「ドルフィンライダーになりたいっていう夢を応援してくれた美月を思い出しながら三年間飛んできたんだ。だからせめて一度は美月に見てほしかった。だけどそうか、見てくれたのか」

かみしめるようにつぶやく碧人に、美月はコクコクうなずく。

「蓮人もサックって何度も言って、手を振ってました。サックが大好きだから」

「なんだよ。これ以上、喜ばせるなよ」

ふと顔を逸らした碧人の目に光るものが見えたのは気のせいだろうか。

「碧人先輩……」

これほど動揺している碧人を見るのは初めてだ。

「だから、この花束を贈られる時も蓮人と一緒に見ていて。それに碧人先輩は独身なのにきれいな女性が現われたから、ファンの人たちみんなびっくり……えっ?」

いきなり強い力で抱き寄せられ、気づけば碧人の胸に顔を押しつけられている。

「あ、あの、碧人先輩?」

「先輩は、もういい。それより、どうしてそれを言ってくれなかった……いや、来るなら先に言ってほしかった……それも違うな。どうしてもっと早く連絡してくれなかったんだ。俺のフライトなら何度でも見せてやれたはずなんだ」

耳もとに響く碧人のくぐもった声。抑えていてもわかる切なさが伝わってきて胸が痛い。

「ごめんなさい」

「そうじゃない。美月は悪くない。俺のためってわかってるんだ。ただ、悔しいだけだ」

碧人は思いを吐き出すように言葉を重ね、美月を強く抱きしめた。

その強さは碧人の悔しさそのものだ。

美月はそれを受け止めたくて、碧人の身体を強く抱きしめた。

「私も同じことを思ってました」

「同じ?」

「びっくりするくらい。同じです」

美月はもぞもぞと顔を上げ、憂いを帯びた碧人の顔を見つめた。

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