無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「もしも高校生だったあの時に碧人先輩と別れなかったら、それに再会した時にまだ好きだって伝えていたら、花束を持って碧人先輩の前に立っているのは私だったかもしれないって。今さらだけど、すごく悔し――」

「美月っ」

「かった……あっ」

言い終わるのを待たず碧人にいっそう強く抱きしめられて、美月は息を止めた。碧人の胸の奥から速すぎる鼓動が聞こえてくる。

「愛してる。二度と離したくない」

美月は身体を震わせた。

「何度も後悔した。あの時俺が強かったら美月と別れることもなかったはずなんだ」

「違います。私の方が弱くて逃げ出したんです」

大けがを負ったのはたしかに美月の方だが、碧人の心は美月以上に傷ついたはずだ。

寄り添って支えるべきだったと、何度も悔んだ。

「そうじゃない。美月を守れなかった自分が許せなくて、情けなくて、俺が逃げたんだ。それが美月のためだって言い訳して、俺が弱かっただけで美月は悪くない」

「でも、違う。私――」

碧人がそれほどの苦しみを抱えていると知って、全身に痛みが走る。

そんな苦しみを抱えながら厳しい訓練に向き合い、耐えていたのだろうか。

ドルフィンライダーの任務を無事に終え、今は一流の戦闘機パイロットと認められた者しか任務に就けないイーグルドライバーだ。
 
相当な努力を重ねてきたに違いない。

「もう二度と美月から離れないし、苦しめるようなことはしない。なにがあっても俺が守るし幸せにする。次に再会することがあったら絶対にそうすると決めていたんだ」
 
碧人の想いの強さが切なく聞こえて胸にグッとくる。

泣きたくないのにまた泣いてしまいそうだ。

「この十年以上、美月を思い出さない日はなかった」

わずかに落ち着きを取り戻したような声で、碧人はつぶやいた。

「私も、忘れられなかった」

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