無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
今日、婚姻届と一緒に蓮人の認知届も提出して、法律的にも蓮人は碧人の子だと認められた。碧人はそのことがよほどうれしいのか〝俺の息子〟と繰り返しては、蓮人を優しく見つめている。

「俺の息子?」

その時、美月たちの背後から声が聞こえ振り向いた。

目の前に、パンツスーツがよく似合う長身の女性が立っていた。

切れ長の涼しげな目が印象的な美しい女性。ショートカットがよく似合っている。

三十代半ばくらいだろうか、険しい表情で碧人をまじまじと見つめていた。

「お久しぶりです。桜井一尉によく似た方がいらっしゃるなと思ったら、ご本人だったんですね。驚きました。お元気ですか」

碧人の知り合いなのか、女性はそう言って碧人との距離を詰めた。

「はい、おかげさまで。木島さんとはラストフライトの時以来ですね。そういえば、ブルーのフライト記録の雑誌、わざわざ送っていただいてありがとうございました。基地で受け取らせていただきました」

「木島?」
 
聞き覚えのある名前に、美月は小さく反応する。

「いえ、取材に協力していただいた皆さんにご用意するのは当然です。それに桜井一尉の人気のおかげで売れ行きも好調らしくて、お礼ならこちらの方で申し上げるべきなんです。ところで、あの、こちらは……?」

木島は美月と蓮人を交互に見つめ、訝かしげに問いかける。

「ああ、紹介が遅れましたね。妻の美月です。そして息子の蓮人。今月三歳になったばかりです」

「妻……息子?」

木島は目を見開き呆然とつぶやいた。

「美月、こちらはカメラマンの木島忍さん。航空機の写真を撮られていてブルーインパルスも長く記録して下さっているんだ」

「木島忍さんって……あっ」

その名前なら何度も目にしたことがある。碧人がブルーインパルスの一員になって以来買い集めた雑誌や写真集のほとんどに、その名前がクレジットされているのだ。
< 92 / 137 >

この作品をシェア

pagetop