無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
多少落ち着いてきたが、相変わらず蓮人は碧人に甘え放題だ。

もともと蓮人は〝サック〟のことが大好きだが、何度も顔を合わせる中で子どもながらに感じるものがあるのだろう。

無意識にしろ碧人の気を引いて、状況をうかがっているのかもしれない。

「木島さん、これで失礼します」

「は、はい。でも、あの――」

碧人はまだ納得できていない様子の木島を残し、あっさりその場を離れた。

「失礼します」

美月も慌てて頭を下げ、手を差し出して待つ碧人のもとへ足を向けた。

木島の視線が追いかけているような気がしたが、すぐにそのことは頭から抜けた。

「ままー。おなかすいたー」

蓮人が碧人の腕の中でぐずぐず言い始めたのだ。

お茶を飲ませつつなだめるのに気を取られてしまい、ようやく蓮人が落ち着いた時にはもう、そこに木島の姿はなかった。

「木島、忍さん」

駅に向かって歩きながら、美月はぼんやりつぶやいた。

「木島さんがどうかしたのか?」

碧人は蓮人の手を引きながら、美月の顔を覗き込んだ。

「いえ。ただ、彼女のことなら私、知ってました。といっても名前だけですけど。ブルーインパルス関連の雑誌とか写真集に彼女の名前をよく見かけるんです」

「ああ、いい写真を撮るからいろいろ声をかけられてるって聞いたことがあるな」

「わかります。印象的な写真が多くてついつい見入っちゃって」

とくに碧人が乗っていたブルーインパルス四番機の写真を見つけると、目を凝らしていつまでも見ていた。

「それにしても女性だったんですね。名前を見て男性だと思ってました」

「隊の中でも誤解する隊員は結構いたな」

「ですよね。だけど写真だけでなくご本人もあんなにきれいな方だったんですね。おまけにカメラマンとして成功して自立しているし。圧倒されそうです」

それに、と美月は内心思いを巡らしため息を吐く。

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