鬱乙女ゲーム世界に転生したので漫才コンビ「悪役令嬢」で婚約解消いたします!
「フランシス様はそのっ――」

 なんだか緊張がこちらにまで伝染してきたけど、何を言い出すの?

「ロゼリアのっ――」

 私の?

「そ、その……ロゼリアのこと、ど、どう思っているんですか?」

 男なのにぷるぷるしながら涙目で聞く様子が可憐だ。可憐すぎて内容が頭に入ってこない。私のこと? そんなの分かりきっているわよね?

「ふっ……、お笑いという文化を広めようとしている可愛いお嬢さんだな」

 そうよね?
 
「……っ、譲りませんから」

 え?

「あ、相方の座は、譲りませんから!」

 強く言ったあとにどよーんとしているわね。そう……そんなことを心配していたの。お笑いに理解があるだけで、フランシス様はやりたいわけじゃないと思うわよ? やさしいから、きっとフランシス様が相方になりたいのに自分が障害になると考えたのね。

 ほら、彼もクックと笑っているじゃない。でも嬉しいわ。そんなにお笑いにはまってくれたなんて。ほとんど無理矢理だったから罪悪感はあったのよね。

「心配いらないよ。そのつもりはない」
「は、はい……あの、打ち合わせにも時間かかるので、あんまりその……」
「大丈夫だ、デートに誘うのはたまににしておこう」
「!?」
 
 デートってまた軽薄な……。それより、打ち合わせにそんなに本気で取り組もうと思ってくれているなんて、やっぱりアダムに頼んでよかったわ。やる気がもりもりと湧いてきた!

「皆様! 私、お笑いでトップをとりますわ! 応援よろしくお願いします!」

 そんな文化はないから、オンリーワンで既にトップだけどね!

 諸々の手続きが終わったらすぐにこの国を出よう。そう思いながら、皆の拍手に心地よい開放感を感じた。

 まるで私の新しい人生へのファンファーレのようだ。

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