離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 自宅の最寄り駅からの帰り道。やはり少しの会話もなく歩いていた二人だが、千博が突然慌てた様子で話しかけてきた。

「美鈴、少しここで待っていて」
「え? うん」

 千博は美鈴を置いてどこかへ駆けだしていく。いったい何があったのだろうかとその姿を目で追えば、千博は白杖を持った男性へと駆け寄っていた。そのままその男性に寄り添い、車通りの多い道を渡るのを介助している。

 千博らしすぎるその行動に美鈴は驚く。

 千博が優しいことはもちろん知っているが、偽りの愛を演じているとわかった今は、ただのパフォーマンスなのだと思っていたのだ。

 ここに千博を知るほかの誰かがいるならまだしも、今は美鈴しかいない。それなのにその行動に出るのは驚きだった。
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