離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 柔軟でありながら芯の強い美鈴は、千博がこうありたいと思う人物像そのもので、彼女となら完璧な理想を実現できると以前の千博は信じて疑わなかった。だからこそ、美鈴と結婚した。

 本当は誰かと結婚するつもりなど微塵もなかったのだ。必要なだけの人付き合いをして生きていけばいい。自分以外の誰かと過ごす人生など必要ない。そう考えていた。

 それを美鈴があの日に覆した。インド人男性を通した出会いはただの偶然で、それまで美鈴のことはただの受付嬢としか認識していなかった。特に気にかけたことはなかった。

 けれど、あの日のたった三十分の美鈴との会話があまりに心地よくて、一瞬で美鈴との未来が想像された。この人とならもっと生きやすい空間が作れる。そう思ったのだ。

 人の話に耳を傾け、自身の意見を伝え、話を発展させる。その上で相手に嫌な印象を抱かせず、心地よい雰囲気まで生み出す。まさに理想だと思った。

 この理想の人を逃してはならない。そう強く思った千博は初めて自分からアプローチをかけ、半ば強引に結婚まで進めた。
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