離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「今日はお願いに伺ったんです。いい加減に相馬さんを解放してくれませんか? でないと私たちが一緒になれないんですよ。私、不倫は趣味じゃないので。だから、早く別れてくれません?」

 二人の関係を仄めかす言葉に強く胸が痛んだ。

 きっと宮下からすれば、真っ当な願いなのだろう。しかし、そこに踏み込んでくることはどうしても許せない。

 離婚までの半年という時間は美鈴が千博と向き合うための時間だ。決してそこを汚されたくはない。美鈴と千博以外の誰にも触れられたくはない。

 美鈴はまだわずかに残っている妻としての矜持を頼りに、弱々しくも精一杯の言葉で言い返す。

「……あなたには関係ありません。私と千博さんの問題です」
「関係あるに決まってるじゃないですか。相馬さんは私と再婚するんですから。あなたが別れてくれないとこっちにしわ寄せがくるんです。あなたが邪魔をしているんですよ」
「……」

 洋子から聞いたときとは比べ物にならないくらい鋭く強い痛みに襲われる。

 千博がほかの誰かと一緒になることはもうわかっていたはずなのに、こうして本人を前に現実のものとして思い知らされると、とても受け止めきれない。

 美鈴は胸に手を当て、痛みに耐えるように俯く。
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