離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「……どうして……どうして今さらそんなこと言うのよ……千博さんが好きなのは、あの子でしょう?」
「宮下さんのことだな。ごめん。あのとき美鈴が誤解をしているとわかったのに、それを解くことよりも自分の感情を優先してしまった。本当にすまない。だが、宮下さんに対してそんな感情を抱いたことはないよ。彼女と再婚する気もまったくない」
「え……? でも……」
「彼女に言い寄られていたことは確かだけど、僕は一度だってその誘いには乗っていない」

 俄には信じがたい。宮下はとても強気に美鈴に接してきた。ならば、それだけの根拠があったはずだ。

 大体あんなものを持ち帰っておいて、何もないとは思えない。

「じゃあ、あのハンカチは?」
「ハンカチ?」
「千博さんが持って帰って来たじゃない」

 千博は心当たりがないと言った顔でしばし考え込む。まさか忘れたのだろうかと、美鈴は怪訝な表情を浮かべる。

「ハンカチ……そうか。あれか! あれは宮下さんに押しつけられて、返すタイミングを逃していただけだ。美鈴に渡すつもりはなかった。中身も知らなかった」
「嘘……」
「本当だよ。それに、宮下さんには二度とこちらに関わるなとはっきり言ってある。もしも信じられないなら、浦部さんに確認してみるといい」

 予想外の名前が出てきて思わず目を丸くする。

「洋子に?」
「会社で随分と強く断ったから、社内で話が広まってしまったんだよ。浦部さんもそれを聞いて、僕に発破をかけに来たんだ。逃げずに美鈴に誠意を見せろとね」

 瞬時に不可思議だった点が解明される。洋子との約束が千博とのものにすり替わったのは、洋子がそう仕向けたからなのだと。

「彼女の言う通りだと思った。美鈴に会う資格はないと思っていたけど、せめて僕の内側は見せてから去るべきだったと気づいたんだ。だから、約束を変わってもらった」

 千博はそこで言葉を区切ると鞄から何かを取り出し、美鈴の前に差し出してきた。
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