離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 美鈴の返答に千博はわずかに瞠目する。あの日に自分の気持ちは話していたつもりだったけれど、ちゃんと伝わっていなかったのかもしれない。

「ただ知りたいだけ。それだけなの。でも、あの日から私たちほとんど会話をしてないでしょう?」
「……それは――」
「わかってる。偽りをやめるように言ったのは私だからちゃんとわかってるの。無理に会話をするのも違うと思ってる。でも、このままだと本当の千博さんを知らないままお別れになる……」

 その未来を想像して切なくなる。千博のことをよく知らないまま、自分の気持ちもわからないまま、独りに戻る。それはあまりに虚しい。そんな未来は迎えたくない。

「私はちゃんとあなたを知ってから終わりを迎えたい。今はそのための時間だから。だからお願い。教えて? 千博さんは本当は何が好き?」

 切実に問いかければ、千博は随分と困った表情をする。
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