はるけき きみに  ー 彼方より -
「それにしても一年前のあのときに文を託すだなんて」
「はい。いったいどのような用向きでございましょうか」

 封筒は意外に分厚く、だからこそ内容が気になった。
 開封して読みたい気持になる。
 でも、とためらうものがあった。

 封書は糊で閉じられ、きっちり『(かん)』と封印されている。
 これを自分が開いていいものだろうか。それをすれば父の遺志に反するような気がした。

「・・八重」
「はい」
「この手紙は直接持って行きましょう、私たちが」
「えっ」

「京都へは急げば三日で行けるわ。あそこの住職様にお会いしてみましょう。あの信安様が読まれたら、その後で私たちにも見せてくださると思うわ」
「そ、そうでございますね」

「お父様の気持ちを考えても、それが一番いいと思うのよ」

 そう言って手紙を胸に抱いた。


          ◆  ◆  ◆
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