はるけき きみに  ー 彼方より -
 堺から京都までは、宿を取りながら街道を歩くことになる。
 
 開けた大通りがあるかと思えば、山道のようなさびれた所もあった。

 それを女が二人、そして背の高い男が進んでいた。

「本当に、お嬢さまの決断には圧倒させられます。やにわに『出発しましょう』だなんて」
「うーん、そうなんだけどね。でも父はあのご住職様に何かを相談したかったのではと思えたのよ」

「相談、でございますか」
「あんなことが起こる朝に託した手紙でしょう。だから、なんといえばいいのか、父には父の事情があって、何かの問題を抱えていたんじゃないかと」


 きのう、初めて丹波の文を目にした。
 そのときは案外のんきそうにしていた。

 だが夜が更けても紫音の部屋の明かりはついたままだった。
 マシューが部屋の外から声をかける。

「ちょっといいかい? こんな時間にどうかと思うんだけど」

 出てきた紫音はどこか憔悴していた。

「読んだのか、手紙を」
「いいえ。でもここに書かれてあることを想像してしまって。もしかしてあの事件のことではないかと思えて」

「あの事件? それは丹波殿が拘束されたことか」
「いいえ。母のことよ、母の香苗のことを書いてあるんじゃないかと思ったのよ」

「母上のこと?」
「そう。母は私が五歳のときに亡くなったの。京都の実家の小田切の屋敷で」

「・・・・」
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