はるけき きみに  ー 彼方より -
「それも病気とかじゃなくて」
 と間をおいてから、

「自害したのよ、・・その、刃物で喉をついて」
 一気に告げた。
「ええっ」

「亡くなった母は修永寺で弔ってもらって、そのお墓も境内にあるのよ。でもなぜ篠沢家の墓地へ連れて帰らなかったのか、それがずっと疑問でね」

 あるとき父に聞いてみた。
 丹波は瞠目し、つぎには柔和な笑みをつくった。

「それが香苗の、お前の母上の望みだったのだ」

「あのときの父はなんとも辛そうで、それ以上は聞けなかったの」
 感情を表に出さない丹波にしては珍しいことだった。

「だからこの手紙もそれに関係しているのでは、と思ったものだから」

「それなら」
 躊躇なく言った。
「とにかく行ってみよう。これを持参して住職に開封してもらおうじゃないか」


 出航を控えているサジットは同行することが出来ない。
 紫音と八重、そしてマシューの三人が旅装を整えた。
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