はるけき きみに  ー 彼方より -
 三日目の夜、修永寺に着いた。

 突然の訪問だ。挨拶だけして旅籠を探すつもりだった。

 だが迎えた僧侶は、
「小田切様ゆかりのお嬢様でございますね。それならぜひ宿坊をお使いください」
 にこやかに告げた。

 彼は紫音が知っているあの信安ではなかった。新任だろうか、若い僧だ。

 じっと見つめていると、
「私は宋念(そうねん)と申します。どうぞお見知りおきくださいませ」
 丁寧に頭を下げた。


 もてなしを受けて一夜を明かした。

 目覚めの耳に鐘楼の鐘の音が響いた。
 ゴーンという音色は、紫音が子供のころからなじんだ音だ。それが何とも言えず沁みてくる。

 宿坊から出ると西隣に大きな屋敷があった。

 それをじっと眺める。
 マシューが、
「君の母上のご実家だよね」
「そうなんだけど、でも今は他人の手に渡っているのよ」

「え?」
「小田切家は不幸が続いてね、それで京都から離れていったのよ。西国(さいごく)のほうに行くと連絡があってから音信不通になっているわ」
 仕方のないことよ、と寂しそうに笑った。
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