はるけき きみに  ー 彼方より -
「赤子さまは本当にかわいいやや子でした。しかし香苗さまは苦悩されておりました。それも随分と、心を病むほどまでに」
「・・・・」

「拙僧らはそれが不思議でなりませんでした。だが、あるとき香苗さまはここに訪れて
救いを求められたのです、生まれた子の父親をめぐる話でございました」
 そこまで言ったときだった。

「いえ、そのお話はちょっと。今ここでしていいものかどうか」

 手紙を読んでいた宋念だ。
 困ったように信安を止めた。

「生まれた子の、父親をめぐる? それはどういう事でございましょう。丹波と香苗の子供は私一人です。私に関する事だと思われます。その手紙を見せてくださいませんか。なにがあったのか知りたいのです」

 紫音が前のめりになる。
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