はるけき きみに  ー 彼方より -
 宴の席に丹波がいた。
「お前、いったいどこへ行っていたのだ」

 丹波は今しがた役所から帰ってきたところだった。
 座敷に妻の姿がない、探そうとしていたのだと言った。
 香苗を見つけて、また上機嫌で歓談していた。


「それだけならまだよかったのでございます」
 宋念は続けた。
「香苗さまの苦悩は、そこから耐え難いものになっていったのです」
 と言ってまた紫音を見た。

 この話を続けるべきか、打ち切るのか、彼の目が迷っている。

「つづけて、ください」
 紫音がうながした。


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