はるけき きみに  ー 彼方より -
 堺の空は晴れていた。
 これなら波もなく無事に出航できるだろう。

 サジットは縁側にいた。
 傍らに荷造りできた布袋がある。

 あとは乗船する知らせを待つだけだった。

 しかし・・。
 息せき切って来た近江屋は、
「大変ですっ、出航する予定だったフライロート号が足止めされました」
「えっ」

「なんでもこの堺の港に、抜け荷の船が紛れ込んでいるとのことで」
「抜け荷だって、それは密貿易船のことか」

「そうです。いま役所の方がその詮議をされているのです。だから全容がつかめるまでどの船も出航は相成らんと」

 思わずその場に座り込む。

 荷造りをしているとすぐにも帰国したい気持ちになった。
 両親や弟妹らの顔が浮かんで仕方なかった。

 荷物の中に手を入れてみる。
 彼らのために買った土産がしまわれていた。
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