はるけき きみに  ー 彼方より -
 用件を告げると近江屋はあたふたと帰った。
 入れ替わりのようにやってくる人影があった。

 石川と田中という青年だった。彼らは役人だった。

 問われるままに、
「紫音さんは不在です」

 次の問いに、
「京都へ出かけたのです、お母さまのお里の隣にあるお寺へです」

 そして、
「いえ、一人ではありません。マシューが一緒です、それと八重さんと三人で」

「なにっ、あのマシューという男と一緒なのか。あのフライロート号に乗ってきた異人だな」
 石川が声を荒げた。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 
「おい、気になるんだろう紫音さんのことが」
 田中がからかうように言う。

「き、気になるなど、・・ばかな」
「しかしだな、八重さんも一緒だそうじゃないか。どうってことはないだろう?」
 
「な、なにを言うんだ、俺はただ・・」
 むきになって答えた。
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