はるけき きみに  ー 彼方より -
 田中がサジットに向いた。
「今日は役所の用事できたのです。いや、・・と言うより丹波様にご報告があって訪問したのです。丹波様のお位牌に案内してもらえませんか」

 石川と違って異人のサジットにも柔らかい物腰だ。

 一年前、篠沢の屋敷が差し押さえられた。
 そのため丹波の位牌は臣下である八重の家で預かっていた。

 仏間に通されて石川と田中が正座した。
 位牌を見つめて合掌する。

 そして、
「丹波様、ようやく我らの目的が達せられようとしています」

「そうです、密貿易船の取り締まりをすることになったのです。ここまで長い時間がかかってしまいました。まことに申し訳ありません」

「ですが、我らは丹波様のご遺志を継いで必ずや黒幕を突き止める所存でございます。うまくいくように見守っていてくださいませ」

 そう言って深々と頭を下げた。


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