はるけき きみに  ー 彼方より -
 宋念は話を続けていた。

 それが長引くにつれ紫音の顔色が変わっていく。
 その心情を傷つけているのが痛いほど分かった。

 だが彼女は心を決めている、今言葉を濁してどうなるというのか。
 真実を伝えるのが自分の役目だと思った。

「その親睦の会でのこと。またそれ以降のいきさつは、香苗さまにとって過酷なものでした」
「それ以降の、いきさつ?」

「はい。間もなくして妊娠していることに気付かれたそうでございますから」
「・・っ!」

「丹波様とご夫婦になられて、丹波様はすぐにでもお子が欲しかったそうなのです。しかしなかなか恵まれずに。けっきょく香苗さまのご妊娠は、結婚してから七年後の出来事だったのです」

 子が出来たという報告に丹波は手放しで喜んだ。
 これで篠沢の跡目を継ぐ子が出来たのだ。いや嬉しいことだ、めでたいことだ、と。

 それを見るにつけ、やがて胎動が始まるにつけ、香苗の動揺は大きくなっていく。
 この子は果たして旦那様の子なのだろうか、・・そんな恐ろしい疑問が頭をめぐっていた。
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