はるけき きみに ー 彼方より -
それを見るともなしに宋念が見ている。
そして、
「その名前はわからないのです。香苗さまは住職に告げたそうでございますが・・」
と言ってから、
「ですが、信安様はそのあと記憶が鈍ることがありまして」
最初は、信安の考えでその名を伏せているように思った。
だが時間が経つごとに、伏せたそれが彼のなかでも混濁しているように見えた。
「そういう事情でございまして、私はその名前を知らないのです」
「そう・・ですか。でも今のお話では父はその名前を知っていたのですね」
確かめるようにもう一度聞いた。
「はい」
カコーンと音がする。
庭の鹿威しだった。
澄み切ったその音色が、遠回りして耳にたどり着いた。
そして、
「その名前はわからないのです。香苗さまは住職に告げたそうでございますが・・」
と言ってから、
「ですが、信安様はそのあと記憶が鈍ることがありまして」
最初は、信安の考えでその名を伏せているように思った。
だが時間が経つごとに、伏せたそれが彼のなかでも混濁しているように見えた。
「そういう事情でございまして、私はその名前を知らないのです」
「そう・・ですか。でも今のお話では父はその名前を知っていたのですね」
確かめるようにもう一度聞いた。
「はい」
カコーンと音がする。
庭の鹿威しだった。
澄み切ったその音色が、遠回りして耳にたどり着いた。