はるけき きみに  ー 彼方より -
 八重の屋敷に帰ったのは夜になっていた。
 両手に荷物がある。
 クレイブ船長がこれも持って行けと渡した品々だ。

 それは南方で手に入れた器具であったり、珍しい布であったりする。
 気色を浮かべた八重に、サジットが使い方を教える。

 そんな傍らで、紫音が穏やかに微笑んでいた。

「ありがとう、マシュー。でも一番うれしいのは・・」
「え?」

「あなたが帰って来てくれたことよ。オランダ戦でどんな目にあうか、それは気が気じゃなかったんだから」

 紫音は、あの鹿島の屋敷でマシューに助けられた。
 鹿島は胸ぐらをつかんで力任せに殴ろうとした。思い出しても体が震えてくる。
 そんな窮地を彼が救ってくれたのだ。

 それから意識のどこかが大きく変化していた。

 帰って来た彼を見たとたん涙が浮かぶ。そんな自分に驚いた。

 そんな彼女を見てマシューの目に力がこもった。
 じわりと満足げに微笑んだ。
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