はるけき きみに  ー 彼方より -
「いつか、君と航海に出たいな。大きな海を渡って、見たこともない国へ行くんだ。面白いぞ、知らない世界が目の前に広がっているんだからね」

 彼はそう話しかけた。

 南に向いた窓から風が入ってくる。
 あの、下乃浜で吹いていた風に似ていた。

「そう、でしょうね」
 微笑んだ彼につられて返事をする。

「そうしていつか、俺の国、イングランドに連れて行ってやりたいな」
「・・いんぐ、らんど?」
「そうだよ」

「でもとっても遠い国なんでしょう」
「近くはないかな。でも船に乗って、毎日のぼってくる朝日を眺めて、沈んでいく夕陽を見て先へ先へと進んでいくんだ」
「・・・・」

「大海原を眺めていると、自分が今ここで生きているんだと実感できる。なんとも言えない感動だよ、あれは」

 目がキラキラと輝いていた。
 それを見ると紫音も浮き立ってくる。
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