はるけき きみに  ー 彼方より -
 だが、一方では夢物語のようにも思えた。
 この堺から出たと言えば、あの下乃浜だけだった。

 遠い海の向こうに知らない世界があるなんて。
 しかも自分がそこへ行くだなどと。

 ついじっと黙ってしまう。
 そんな紫音に、
「大丈夫だ」
 やわらかに話しかけた。

「そんなに大げさに考えなくていい。一番大事なことはそこへ行きたいかどうかだ。自分の中でそんなふうに込み上げてくる気持ちがあるかないかだ。人生は長い、やって来る時間の中でそう感じることがあったら、そのときに踏み出せばいいんだから」

「・・そう、かしら」
 マシューの語ることはとてつもなく大きく思えた。
 大海原、やって来る時間の中で・・、今の紫音には考えたこともない言葉だ。

「そうだよ、そうしていたら自然に答えが見つかる、そんなものだと思うよ」

 紫音はじっと見つめ、マシューはそんな彼女から目を離さない。
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