はるけき きみに  ー 彼方より -
 数日中に通訳に駆り出されることになっていた。
 堺での初めての仕事だ。

 少しでも高く売りたいクレイブ船長と商人の駆け引きが予想された。
 間に立ってどこまで折衝できるのか。

 そして、と思う。
 身近に潜んでいる影の存在をも意識していた。
 鹿島が放った密偵だ。
 この屋敷の周りにもそんな動きが始まっている。

 これからどうなっていくのだろう。
 だが考えても始まらない、ただ前に突き進んでいくだけだ。

 紫音が首をかしげた。
「どうしたの?」

 急に黙り込んだマシューに問いかけたのだ。

 ふと胸が熱くなる。
 そんな紫音を抱きしめたくなった。

 そんな衝動に駆られていた。
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