はるけき きみに  ー 彼方より -
「でも、俺はあの船では行かないだろうな。なにしろクレイプは、あの嵐の中でマストに登れと強要してきた奴だ。そんな船長がいる船にまた乗る気はないね」

 ほっとしたものが紫音に浮かぶ。
 しかし、
「堺にはほかの外国船も寄港するんだ。そのうち乗船できる便が見つかるはずだからね」
 あっさり続けた。

 マシューは通訳が出来る、そんな彼なら一も二もなく同行させるだろう。誰が考えてもわかることだ。

 表情が消えた彼女に、
「どうしたの」

「いえ、その・・、うらやましいと思ったものだから」
「うらやましい?」
「そうよ。いろんな船に乗れて、いろんな国へ行けるなんてすごいことでしょう。そこで様々な人と出逢って、色々な体験ができるなんて」
 
 思いはどうしてもそこへ行きついてしまう。
< 94 / 107 >

この作品をシェア

pagetop